Semi-Automatic/assembler

 

 assemblerとは"組み立て"を意味し、プログラミングの分野においては0と1で表されるmachine language(機械語)を、人間に分かり易い言語に変換するソフトウェアの事を指す。

 本作では画面上に、実際の都市の位置情報を反映させたグリッドを配置している。それらの位置情報に対応する環境データ(地形、人口量、交通量、気象など)には、論理図形としてイメージに置き換わるためのシステムを付加した。ここでのシステムとは、それぞれの環境データに設定したイメージの発生条件や、その値に伴って形を変化させるルールの事であり、その規則に従って描画が行われている。

 規則化された幾つかの計画は自動的に行われる。画面上での規則は、全てのオブジェクトに同じ様に反映されていなければならない。変更を加えたい箇所があれば、その描画計画に立ち戻って規則自体を修正するしかなく、その結果、他の箇所にも影響を与えることになる。

 通常、絵画制作において「考える」や「描く」といった計画と実行の工程はその境がない。しかし本作は、計画の組み立てと自動化された実行の工程が交互に行われる、半自動方式を採用した絵画となっている。

 

(Latitude:N34°43.7'-N35°45'/Longitude:E135°03'-E135°00')August05,2013,16:00p.m.JST

 Assembler#1(Latitude:N34°43.7'-N35°45'/Longitude:E135°03'-E135°00')August05,2013,16:00p.m.JST - From the south

Assembler#1(Latitude:N34°43.7'-N35°45'/Longitude:E135°03'-E135°00')August05,2013,16:00p.m.JST - From the south


2014
Oil on canvas

w727×h1167mm

 

Assembler#2(Latitude:N34°43.7'-N35°45'/Longitude:E135°03'-E135°00')August05,2013,16:00p.m.JST - From the north

Assembler#2(Latitude:N34°43.7'-N35°45'/Longitude:E135°03'-E135°00')August05,2013,16:00p.m.JST - From the north

 

2014
Oil on canvas
 
w910×h1167mm

 

 近年の温暖化とそれに伴う局所的な集中豪雨、急激な温度変化、寒冷化は顕著になり、この異常気象に対して注意が促されている。

 私は京都在住だが、特に去年の真夏日は肌を焼くような熱風と、極短時間の内に局所的に発生したバケツの水をひっくり返した様な雨が衝撃的だった。8 月5 日に記録された集中豪雨では、普段浸水することのない京都最大の繁華街である四条通、京都駅地下街までもが浸水している。

 

 

 8月5日
 この日はよく晴れた日であった。朝から昼にかけて気温が高い夏日だった。しかし15時30分頃、突如暗雲がたちこめ、バケツをひっくり返した様な雨が局所的に降り出した。室内からは屋根を突き破るが如く轟音が鳴り響く。その後、16時頃には雨はすっかり上がってしまった。

図1:residential area
図1:residential area

 都心部ではアスファルトやコンクリートの壁が迷路の様に建てられて風が通らない。熱が何処にも逃げずにこもるため、急激な上昇気流が発生し、短時間で集中的に雨を降らす積乱雲を形成する。これが都市型集中豪雨である。

  人口密度が高ければ、物理的な距離を保たずにプライベート空間を無理やり作る必要がある。
その目的で立てられた壁が結果として風を遮り、集中豪雨の原因になる。さらに建築物は剛体であるために水はけが悪く、細かく仕切られた箱の様な住居はすぐに水が溢れてしまう。
マンションなどはまさに、都市の住居構造の象徴であり、住人のプライベートを仕切る壁は、都市の中心に向かって、より細かくなっている。このような性質を持った居住地区を、数学のフラクタル図形として作図し、各地区の人口密度に比例した図形のサイズで再現されている。<図1>

 

図2:mountainous rain gauge
図2:mountainous rain gauge

 山間部では、雨は土壌や樹木の根に吸収される。急激な雨でもその勢いを弱めつつ、降り止んだ後も川となり、こんこんと流れ続ける。溜められた水は一気に流れきってしまわずに、ゆっくり流れてくる。

 標高に応じた長さのスケールに置き換えた山々のデータは、その間に伸縮性のある《cloth》(布地)を想定し、張り付けていくことで山の稜線をシミュレートした。
その棒に張り合わされた布は、伸び、垂れ下がることで、一定の雨量までは雨水が溜まる機構を有しており、8月5日16時の雨量が、地域ごとに布の伸び方で再現されている。<図2>

 

 

 京都全域にわたって2万5千分1地図上に記載された標高成果を書き出し、それに応じたスケールを100m単位で図示した。スケールの座標間に沢を挟まず、かつ距離が17ポイント以下の隣接したスケールにはリンクが結ばれる。ポイントへの変換方式としては、2点の距離をX方向に1マス3ポイント、Y方向に1マス2ポイントで計算したときの合計となっている。リンクはスケールの頂点同士を繋ぎ、 3点結ばれた状態で面を形成する。4点以上のスケールが互いにすべてのスケールとリンク可能な状態においては、よりポイントの少ないリンクを優先した。
 細かい標高データは破棄し、主要な標高データのみを扱った厳密なリンク設定を行うことで、本来の地形を簡略化した擬似的な山へ変質させている。

 

RDT network:Octahedron

Assembler#4(Latitude:N34°43.7'-N35°45'/Longitude:E135°03'-E135°00')RDT network:Octahedron

Assembler#4(Latitude:N34°43.7'-N35°45'/Longitude:E135°03'-E135°00')RDT network:Octahedron

 
2014
Oil on canvas
 
w1167×h1167mm

 

 都市間の繋がりを構成する要素として、都市間の交通網でIC、JCTを含む道、いわゆる高速道路を表示している。
 一般道も含め、交通網の組織構成を大まかに3つに分けると、1.長距離を高速で移動して大まかな周辺地域まで到着できる高速道路、2.中距離をそこそこのスピードで移動して目的地の近くまで到着できる国道、3.短距離をゆっくりと移動して目的地まで到着できる路地、という用途に分かれて各地に存在している。それを順に乗り分けることで、大勢の人が様々な方向に同時に向かっても、一極に集中することなく、スムーズに目的地に到達することが出来る。
 この組織化された交通網と移動方法の進化のおかげで、距離の概念は以前とは大きく変わった。交通網は山岳地帯を避けて都市間のみを繋ぎ、交通網を経由する場所とそうでない場所で、概念上の距離に大きな差を生じさせている。これは現状として、平面上に配置された地図では再現できていない部分があることを意味する。
 これを受けて「assembler #4」では、交通網を基準に地理座標を配列し直した。その形式として、スーパーコンピュータの情報処理機構に実装されている相互結合網を参照している。


 本作で採用しているものは《RDT network》(Recursive Diagonal Torus:再帰的相互結合網)という結合方式である。このRDT結合網も交通網と同様に、情報の伝達距離を考慮して用途ごとに組織化したネットワークを持つため、交通網の高速道路をランク2、一般道をランク1、わき道をランク0の《RDT network》に対応させることで、人の移動は情報伝達に、対象範囲全域は計画されたネットワークとしてそれぞれ置き換えられた。
 これらは絵画上で、最上ランクにつながるターミナルを頂点として、45度に展開するリンクを辺とする閉じた図形によって表現されている。RDTを形成する結合網ではターミナルに隣接する面が4つ存在し、三次元図形の八面体に張り合わせることが出来る。組織化された交通網を基準とした地理座標は図形上に配列し直され、平面の地図から乖離した概念上の距離を補完している。